NOMOSANの定年準備日記

50代半ばを過ぎて、定年後を意識して始めた市民農園での野菜作りなど、様々な事柄について気のおもむくままに書いています

ジャレド・ダイヤモンド著「危機と人類」を読んで

本書はまず近現代史において国家が迎えた危機をどのように乗り越えていったか、7つの事例につき説明しています。

7つの事例は下記の通りとなっています。

フィンランドの対ソ戦争

・日本の明治維新

・チリのクーデター

インドネシアのクーデター

・オーストラリア

・日本を待ち受けるもの

アメリカを待ち受けるもの

 

最後の二つの日本とアメリカの事例はこれからの話です。

 

国家的危機の帰結に関わる要因として下記12点を挙げて、7件の国家的危機について各々の要因がどのように作用したか説明しています。

1, 自国が危機にあるという世論の合意

2, 行動を起こすことへの国家としての責任の受容

3, 囲いをつくり、解決が必要な国家的問題を明確にすること

4, 他の国々からの物質的支援と経済的支援

5, 他の国々を問題解決の手本とすること

6, ナショナル・アイデンティティ

7, 公正な自国評価

8, 国家的危機を経験した歴史

9, 国家的失敗への対処

10, 状況に応じた国としての柔軟性

11, 国家の基本的価値観

12, 地政学的制約がないこと

 

ちなみに個人的危機の帰結にかかわる要因も12個あげています。

基本的な考え方は国家的危機の場合と同じです。

1, 危機に陥っていると認めること

2, 行動を起こすのは自分であるという責任の受容

3, 囲いをつくり、解決が必要な個人的問題を明確にすること

4, 他の人々やグループからの、物心両面での支援

5, 他の人々を問題解決の手本とすること

6, 自我の強さ

7, 公正な自己評価

8, 過去の危機体験

9, 忍耐力

10, 性格の柔軟性

11, 個人の基本的価値観

12, 個人的な制約がないこと

 

最初の5つの事例の説明は近現代史の勉強にもなり非常に面白かったのですが、やはり最後の日本とアメリカの今後の話が最も興味深かったです。

日本が今抱えている危機として筆者は下記を挙げています。。

・巨額の国債発行残高

・女性の役割

・低い出生率

・高齢化

・移民

・中国と韓国

・自然資源管理

これらの中で最後の二つについては日本ではあまり危機と認識されていないが、筆者は非常に重要な問題と捉えています。

「中国と韓国」について日本は第二次大戦までの行いを隣国に対してきちんと謝罪してこなかったため良い関係を築けておらず、将来大きなリスクになる可能性があると筆者は言っています。

第二次大戦で同様の過ちを犯したドイツは、ブラント首相の時代にポーランドなどに対して明確な謝罪をしており、日本と対照的に書かれています。

「自然資源管理」については日本は資源の大輸入国であるにも関わらず、資源管理に不熱心であることを批判しています。

逆に日本では大きな問題として捉えられている低い出生率に基づく人口減少については、逆に殆どの資源を輸入しなければならない日本にとってはプラスに働くと言っているのは面白いと思いました。

 

筆者の母国アメリカを待ち受けるものについてもかなり憂慮しており、特に「政治の二極化による政治的妥協の停滞」と「格差」は大きな問題と捉えています。

日本はアメリカの何年かあとを追っていくので、これらも将来日本にとって大きな問題になる可能性があります。

 

そして最後に人類が今迎えている危機にどのように対処すべきかを説明しています。

世界を待ち受けるものとしては下記が挙げられています。

核兵器

・気候変動

・自然資源の世界的枯渇

・格差

 

これらの解決のためには下記の3点が重要です。

・二国間或いは多国間協定

・地域内の国家間協定

・世界的協定

グローバル化はいくつかの世界の問題の原因になっていますが、逆に解決の要因にもなるということです。