今年は年末年始の休みを長めにとったので、休み中に読む本として買ってきました。
筆者はフランスの歴史人口学者で、ソ連崩壊、リーマンショック、イギリスのEU離脱を予見したことで有名です。
本書は彼の思考のやり方を日本の読者向けに記した本ということです。
彼が思考の見取り図と言っているものは、順に
インプット→着想→検証→分析・洞察→予測
というもので特に目新しいものではありません。
しかし、各々の説明の中には非常に興味深いものがあったので、列挙しておきます。
良い着想を得るためには膨大なデータの蓄積が必要である。
彼が旧ソ連の崩壊を予言した根拠になったのは乳児死亡率が上昇しているというデータのみです。
過去、乳児死亡率が上昇している場合はその社会がうまくいっていないという事実があったからということです。
単純の話ですが、この着想を得るためには知識の蓄積が必要なのです。
社会の発展を考察する場合はシンプルに経済・社会・政治というくくりでまとめる。
PEST分析などのフレームワーク思考につながりますが、シンプルに整理・分析することが大切なのだと思います。
研究者は価値観の違いではなく、研究が良いか悪いかで闘うべき
これは研究者のみならず、価値観やイデオロギーなどであの人の行っていることは駄目などと判断しがちですが、内容で問うべきというのは自分にも当てはまると思いました。
人間は最悪の事態から目をそらす能力をそなえている。ゆえに自分の研究が社会から批判されることを恐れてはならない
「人間は自分が見たいと思う現実しか見ない」とカエサルも言ったそうですが、逆にしそれが見える人が未来のことを考えられるということでしょうか。
予測はデータに基づかない将来をイメージすること。本能的なものなので、芸術的な側面がある。リスクもある。芸術的な学者の条件とは、リスクをとる、思い切る勇気がある、ということ。
筆者はこの「リスクをとって」学者として社会と関わってきたので、いくつかの大きな現象を予測することができたのでしょう。
学者でない我々はここまでの思考方法は必要はないと思いますが、自分が色々考える上でのヒントが詰まっている本でした。