NOMOSANの定年準備日記

50代半ばを過ぎて、定年後を意識して始めた市民農園での野菜作りなど、様々な事柄について気のおもむくままに書いています

「ファクトフルネス」を読みました

昨年発売されて日本でもベストセラーになっている本ですが、ようやく読むことが出来ました。

この本の主張は一言で言うと、今の世の中では知識がアップデートされていなかったり、また誤解や先入観などで間違った知識や思い込みに基づいた判断や行動が多い、まずは正しい事実を知ることが大切、ということです。

冒頭でまず13の質問をあげて、人々がいかに世界の現状を知らないかということを示しています。

 

真実を知ることを妨げるものとして下記10の本能をあげていて、それらを抑えることが必要と説いています。

 

1 分断本能

2 ネガティブ本能

3 直線本能

4 恐怖本能

5 過大視本能

6 パターン化本能

7 宿命本能

8 単純化本能

9 犯人捜し本能

10 焦り本能

 

例えば分断本能は、世界は先進国と発展途上国に分断されていると思い込むことです。

これに基づき発展途上国は豊かになっていないと認識している人が多いのが現状です、しかし、実際は世界は所得別で4つのレベルで考えるべきで、最低所得レベルの層は明らかに減っていいます。

もちろん先進国では現在言われている中間層の分断などの問題はあるのでしょうが、世界全体で見れば最貧困層が減っているのは素晴らしいことで、それは知っておくべき事実だということです。

 

真実を知ることを妨げる10の本能についてはどれも納得できるものでしたが、この中で私が特に近年問題だと思うのが「単純化本能」と「犯人捜し本能」です。

 

「単純化本能」は世の中のさまざまな問題に一つの問題と一つの解答を当てはめてしまう傾向のことです。

人間はシンプルなものの見方に惹かれますし、SNSの普及によって同じものの見方の人同士がコミュニケーションする機会が増えているので、この傾向は強まっています。

しかし、一つの視点だけで世界は理解できないし、多くの問題は単純な一つの解答では解決しません。

複雑な問題は複雑なまま受け入れて解決策を考える心構えが必要です。

 

「犯人捜し本能」については、今のメディアの在り方がまさにこれだと思いますが、見せしめを仕立てて、その人をひたすら責めるということです。

しかし、犯人に仕立て上げた人をいくら責めても問題の本質を理解しなければ解決しません。

これは日本だけで起こっている問題ではありません。

例えばトランプ大統領アメリカの貿易赤字の犯人は中国だとして、関税をかけましたが中国からの輸入は減っても全体としては増えており、問題の本質は別にあることは明らかです。

これも現在社会に蔓延している問題なので、注意する必要があります。

 

筆者はスウェーデンの医師、兼グローバルヘルスの教授で、過去の自身の経験からの例も文中に挙げていて、理解しやすく楽しく読めました。

自己の思考の方向性を改めてチェックすることが出来る良書でした。