NOMOSANの定年準備日記

50代半ばを過ぎて、定年後を意識して始めた市民農園での野菜作りなど、様々な事柄について気のおもむくままに書いています

「新・生産性立国論」を読みました

もう出版から一年くらい経っている本ですが、デービッド・アトキンソン著「新・生産性立国論」を読みました。

彼の本は今年出た「日本人の勝算」もありましたが、今話題になっている生産性にフォーカスしたこちらをまず読んでみることにしました。

 

著者は元ゴールドマンサックスのアナリストで、国宝などを修理が主たる業務の小西美術工藝社の社長、「新・観光立国論」の著者でもあり日本政府観光局の顧問もしています。

彼は東洋経済オンラインで定期的にコラムを書いており、それを読んで本を買ってみることにしました。

この本は日本がこれから向かうべき方向性の提言になります。

 

彼の主張は非常にシンプルで、日本は今後人口が減少していくので生産性を向上させるしか日本経済が生き残る道はないという事です。

生産性とは一人当たりのGDPの事で、これを高めないと総GDPが減るために社会保障が維持できなくなり、国の借金の問題も深刻化します。

日本では生産性を効率性と混同している人が多いなど、生産性についても具体的に解りやすく説明しています。

日本は労働者の質は高いのに生産性が低い理由は国の政策に問題があるのと、経営者が無能だからとの主張も非常に明快です。

また、日本では高品質。低価格が美徳だと思われていますがそれも批判しています。

高品質。低価格は労働者の賃金が低い事が前提の戦略でこれが成り立つのは人口が増えている場合だけです。

日本のような人口が減っていく社会では生産性を高めて高品質・相応価格の戦略をとるべきということです。

 

生産性をあげていくためには

  • 企業数の削減
  • 最低賃金の段階的な引き上げ
  • 女性の活躍

の3点が必要と言っています。

 

非常にシンプルであるがゆえにシンプルすぎるという否定する意見もあるとのことでしたが、物事の本質はシンプルであるという彼の主張は最もだと思います。

3つの提言は納得できるものですが、実行していくためには強力なリーダーシップが必要です。

特に②や③は非常に抵抗が多いと思いますし、経団連など既得権者にコミットしている今の政権では実現は難しいでしょう。

 

また、彼の主張の中には子供のいない人は国家として優遇すべきではないとか、小さな企業は生産性が低いので淘汰されるべきとか少し極端なものもあります。

そういった点でも反発を招くかもしれません。

しかし、生産性を高めて一人当たりのGDPを上げないと経済が縮小してしまうことは明白で、対策を立てなければならないことは明らかです。

 

人口が減っていくことはかなり前から解っていたにも関わらず、平成の30年の間に国は基本的に何もしてきませんでした。

新しい令和の時代は待ったなしで対策が求められますが、果たして出来るのでしょうか?

 

彼の主張は現状の資本主義を前提に考えればその通りだと思います。

ただ資本主義は基本的には規模の拡大、つまり人口増をベースにしているので地球というリソースに限りがある以上、どこかで行き詰まることは明らかです。

長期的に見れば、緩やかにシュリンクしていくモデルというのも考えなければならないのではないかと個人的には思います。

本書のテーマではありませんが。

 

いずれにせよ、本書は生産性という切り口で日本経済の問題点を捉え、対策を提言した良書だと思います。