久しぶりに沢木耕太郎さんのノンフィクションを読みました。
昨年秋に出版された「天路の旅人」です。
この本の主人公は第二次大戦末期に日本軍に密偵として、中国奥深くに潜入した西川一三という人です。
彼は中国の内部事情を探るために、ラマ僧に扮して蒙古人の名前を語って中国奥深くに入っていきます。
途中で終戦及び日本の敗戦を知ることになるのですが、それでもにチベット、ネパール、インドと足掛け7年旅を続け最終的にはインドで身分がばれて日本に送還されます。
彼が旅した場所は6-7000メートル級の高山あり、砂漠あり、大河ありで非常に過酷な旅でしたが、新しい土地やそこに住む人々を知りたいという強い思いで旅を続けたようです。
この本は主に沢木さんの25年渡るインタビューと西川一三が描いた「秘境西域八年の潜行」という本のオリジナル原稿を元に書かれています。
今から70年以上前の話ですが、その自然の雄大さや過酷さ、そして出会った人々の生き生きとした描写に驚かされます。
読んでいてぐんぐん引き込まれていきました。
西川一三は帰国後しばらくしてから結婚して盛岡に移り住み、そこで理美容材の小さな卸店を営み2008年に亡くなりました。
元旦以外は364日働き、旅行なども行かなかったようです。
どこでもその土地にしっかり根を下ろして生活する生き方に魅力を感じます。
非常に読み応えのあるノンフィクションでした。